スキンケアについて

角層の水分保持構造

最近はケミカルピーリング(ケミピ)が取りざたされる一方、角層ケアを売り物にした化粧品も相次いで販売されています。雑誌では「即効性」のあるケミカルピーリングが取り上げられ、通販化粧品やエステ、皮膚科で流行しているようでありますが、しかし、大手化粧品メーカーはケミピに総じて否定的な見解を持っているような感じを受けます。角層上部だけを常にうまく剥がしてやれば、くすみのない肌を保つことができるが、高濃度のAHAだと角層をとりすぎるため、水分保持機能やバリア機能が低下し、様々な皮膚疾患にかかる可能性が高い・・・と考えるからです。

さて、「肌が綺麗」というのは、皮膚の表面の角層の状態を見ていると言われますが、特に皮膚の水分量が「肌の美しさ」を決める大きな要素となります。角層の水分量が10%以下になって肌が乾燥すると粉が吹いて白っぽくなったり、皮が剥けたり、キメが消失したりかさかさしたりするようになってきます。そのため、角層の水分量をしっかり保つことはスキンケアの第一歩といわれます。

では、角層の水分保持機構はどうなっているかといえば、角質細胞内にあるNMFと呼ばれるアミノ酸や尿素などの空気中の水分や真皮からの水分を吸湿して肌に潤いをあたえる成分セラミドという角質細胞と隣の角質細胞の間に詰まって角層細胞を取り囲み、がっちり水分を抱え込む油性成分からなりたっています。NMFやセラミドは角質細胞によって作られますが、そのためには角質細胞が上手く角化していく必要があります。通常、顔の皮膚は腕など体の皮膚に比べて倍のスピードでターンオーバー(角層が剥がれる時間)が進むので、不完全な角層が作られやすい環境になっています。そのため、化粧水を体の皮膚につけてもしみないのに、顔につけたとたんしみるという現象が起きたりします。また、健康な角層は温度変化にもバリア能力を発揮するので、温度変化に敏感になり、寒いとこから暖かいところへ移動したときに顔が赤くなったりします。

角質細胞

角質細胞と天然保湿因子(NMF)、そして細胞間脂質(セラミド等)の模式図。なお、皮脂膜は重要ではない。皮脂膜を重視するメーカーもあるが実際に皮脂膜として存在しているのは顔の一部だけということが現在わかっている。また、残念なことに皮脂の恩恵より、皮脂の刺激によって毛穴が開いてしまっている人が多い・・・。

さて、近頃は過度の角層除去ケアにより、不完全な角層を持つ女性が増えて、様々なトラブルが起こっているようです。特に角層のバリアを担っているセラミドが減少すると、バリア能力が低下することが知られています。中でもアトピー患者はセラミドの量が減っているという報告が相次いでいるようです。ただ、セラミドといっても7種類あって、みんなが同じ種類のセラミドが減少しているわけでもなく、化粧品に配合されているセラミドと自分の肌に不足しているセラミドが一致していないと、バリア能力の回復が今一歩となるようで、そのためセラミド自身だけではなく、セラミドを作る遺伝子に働きかけ、皮膚内で特定のセラミドに偏らないように様々なセラミドの合成を促進させるナイアシンアミドやユーカリエキス、グリコセラミドなどが配合された化粧品も販売されています。

角層の剥がれ方と剥がし方

角質細胞同士はデスモソームという糖タンパク質でくっついており、デスモソーム分解酵素でデスモソームが分解され、角層は剥がれていきます。

角層が厚いとくすみとして我々の目に映りますが、だからといってむやみやたらに角層を剥がす(たとえばAHA化粧品やセロハンテープで剥がす行為も)とバリア能力が壊れてロクな結果にならないようです。古い角層を落とすことは大切ですが、それに執着する必要もありません。

角層の肥厚はTゾーンなど皮脂が大量分泌される部分では、角化が進行して毛穴が目立ったり、過剰ケアでターンオーバースピード(肌の生まれかわりのスピード)を速めることや紫外線防御不足などでおこります。

また、黄体ホルモンは皮脂分泌を促進するので、生理の周期により角層が肥厚しやすくなることもあります。角層の肥厚を抑えくすみを防止するには、最新の化粧品では、化学的に無理矢理剥がすのではなく、自分の持っているデスモソーム分解酵素の活性を高め、自然な生まれ変わりを助けることに重点が置かれた商品が発売され始めています。

AHAやビタミンA系の化粧品は元々角層が肥厚しやすい中年女性をターゲットをしたものでしたが、若い女性には負担になりすぎるため、ケミピより緩和で効果的に角層ケアができるものが望まれているのです。セリン・アラニン等のアミノ酸類やアプリコットエキス、アルテア・ユキノシタエキス等が配合された商品群がこれに該当します。

とくに、ユキノシタはターンオーバースピードを正常に戻して、くすみを即効的にとる効果に優れていると言われています。ユキノシタは生薬系最強のピーリング力を持っているので、AHAやレチノール(ビタミンA)化粧品が肌に合わない人は使えません。