HOW TO 講座

パラベンとフェノキシエタノールについて

化粧品の防腐剤といえば、パラベンですが、最近はフェノキシエタノールの使用量も増えてきています。

単純にパラベンよりイメージがよいからというわけではなく、5年ほど前からフェノキシエタノールの低使用量での処方が確立されてから、パラベンなみに低い使用量に抑えられるようになったからです。

結果として、敏感肌向けの化粧品だけでなく、通販の自然派化粧品を中心に採用が広がっています。

ただ、フェノキシエタノールはパラベンほどスタミナのある防腐力はないため、使われる化粧品は限定されてしまいます。

微生物の繁殖を防ぐ最低使用量(香粧品・医薬品 防腐殺菌剤の科学より)

微生物 メチルパラベン エチルパラベン フェノキシエタノール
大腸菌 .2% 0.1% 0.36%
黄色ブドウ球菌 0.2% 0.1% 0.85%
カンジタ 0.1% 0.05% 0.54%

この数値は、パラベンとフェノキシエタノールの防腐試験法が異なるため、正確には比較できませんが、だいたいフェノキシエタノールの方が防腐するには配合量を高くする必要があることがわかります。ただし、これは5年前までの話でした。

現在では、化粧品の防腐も進んでいて、殺菌剤だけで防腐を行うのではなく、BGやエタノール、ヘキサンジオール、DPG、その他の成分を併用することで、パラベンだけでなく、フェノキシエタノールも減量ができるようになりました。
とくにフェノキシエタノールの減量は、目を見張るものがあります。

ただ、化粧品の防腐効力試験というのは、結構費用がかかり化粧品屋もフェノキシエタノールの減量処方についてわかっていない人間も多いのが事実。
未だにフェノキシエタノールは量を配合しなければいけないと考えている方も多いので、文献ばかりで判断するんじゃなくて、ちゃんと実験して処方組みをしなさいと言いたいです。

パラベンとフェノキシエタノールの毒性比較ですが、食べたときの急性毒性はメチルパラベンはだいたい2.5g/体重1kg当り、フェノキシエタノールは、1g/体重1kg当りとなります。

パラベンやフェノキシエタノールを食べる人は、消費者でいませんが、パラベンの方が毒性は低くなります。

ただ、化粧品は食べるものではなく皮膚に塗るものなので、皮膚刺激が重要となります。
刺激テストを行うと、パラベン混合系とフェノキシエタノールではほとんど差はありません。

スティングギングテスト

大手原料メーカーでの防腐剤カタログからの抜粋です。
非イオン性界面活性剤3種類とメチルパラベン0.2%とプロピルパラベン0.1%のパラベン混合系とフェノキシエタノール0.4%の比較です。

精製水は界面活性剤の刺激を表しています。
スコアは1が全くに何も感じない。2が微妙に何か刺激らしいものを感じる。3が軽い刺激感を感じる。
4が強い刺激感を感じる。となります。8名でのテスト結果の平均値です。

化粧水の場合は、パラベンの使用量は低くなりますが、植物オイルなどが入るとパラベンは
オイルに溶け込んでしまうため、使用量は増えてしまいます。
(パラベンは水より油に溶けやすいため)

防腐剤の比較
防腐剤名 水溶性 特徴 化粧品への配合上限
メチルパラベン 極小(0.2%) pH8以上で加水分解。
油への溶解性大。
非イオン性界面活性剤、
たんぱく質で不活性化
1.0%以下
エチルパラベン 極小(0.08%) 1.0%以下
プロピルパラベン 極小(0.04%) 1.0%以下
ブチルパラベン 極小(0.015%) 1.0%以下
フェノキシエタノール 小(2.8%) - 1.0%以下
ヒノキチオール 動物での催奇性あり 0.25%以下
塩化ベンザルコニウム カチオン界面活性剤 0.05%以下
安息香酸塩 シャンプーなどに使われる 1.0%以下
サリチル酸塩 1.0%以下
グルコン酸クロルヘキシジン - 0.05%以下
イミダリジニルウレア ホルマリン遊離型。
アメリカでよく使われる。
配合不可
dmdmヒダントイン 配合不可

化粧品への配合規制量はこちらが詳しいです。
www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/keshouhin/dl/keshouhin-a.pdf‎

 

ヒノキチオールは動物での催奇性(奇形児が生まれてくる)があり、グルコン酸クロルヘキシジンと共に毒性が強いため、国は化粧品への配合を厳しく制限しています。ただ、皮肉なことに合成界面活性剤を批判する自然派化粧品メーカーは、この二つを好んで使う傾向にあります。
パラベンが危険だから、ヒノキチオールやグルコン酸クロルヘキシジンを使うというのは、おかしな論理だなと考えます。なぜなら毒性が弱いなら、化粧品への配合量を厳しく制限する必要などないからです。