グリセリンについて
グリセリンの値段が下げ止まりません。
とは言っても、企業間取引の場合で、10年ぐらい前に比べて半分近くにまで値段が下がっています。
10年前は1キロ350円ぐらいしたものが、今ではその半分にまで下がっています。
原因はバイオディーゼルが急速に普及して、グリセリンが余りにもだぶつきはじめたからです。
グリセリンは、合成グリセリンと植物油からのグリセリンに大きく分けられます。
昔は石鹸の廃液からグリセリンを回収していましたが、5年前にそれは完全にストップしています。
グリセリンはタバコの葉の保湿剤として、膨大な量がJTに流れていましたが、その用途に見直しが入り、グリセリンの需要量が減り、石鹸の廃液を回収して精製すると採算が合わなくなったからです。
今は、石油の価格が上昇しています。ディーゼルの価格が1リッター90円以上なら、バイオディーゼルは石油に混ぜた方が得になってきます。
ヨーロッパは菜種油の巨大な産地ですが、生産量の半分がバイオディーゼルに向けられたと言われています。いきなり植物油をたくさん作れるようになったわけではありませんから、当然の結果、貧しい国々では食品としての植物油を買うことにままならなくなっています。
農場では、食用油として売るよりバイオディーゼルの方が高く買ってくれるので、食用より車の燃料という方向性に歯止めがかかりません。
砂糖やトウモロコシはバイオエタノールの原料となり、発酵させるとエタノールができます。
バイオディーゼルは軽油に混ぜることが出来、バイオエタノールはガソリン車を走らせることができます。
燃料向けの方が食糧向けより高い値段で売れるので、砂糖の価格はどんどん上がってきています。
また、アメリカの農家は大豆とトウモロコシの両方を作るのが一般的ですが、燃料向けのトウモロコシのほうが高く売れるため、食糧用の大豆の生産が減り始めています。
石油の高騰が思わぬ方面へ波及していますが、バイオディーゼルの急速な発展によりグリセリンがだぶつき始めて、焼却場でもやされたり、寒冷地の道路凍結防止剤として撒かれたりと、10年前には考えられない状況となっています。
ちなみにグリセリンの価格は石油が安いときから合成グリセリンの方が、植物グリセリンより少し高値で取引されています。
理由は合成グリセリンというのは、純度が高く、医薬品向けはほとんど合成グリセリンとなっています。
植物油由来のグリセリンというのは、不純物に油脂や脂肪酸が混ざるため、それを取り除くのに蒸留したりすることで、グリセリン自体が劣化したり、脂肪酸が完全に取りきれないためです。
グリセリンの品質は加熱したり、アルカリ性にすると不純物の脂肪酸が着色するので、すぐにわかります。
医薬品では加熱して、無菌充填するのが当たり前なので、そうすると植物グリセリンの銘柄によっては変色してしまい、全く使えません。
合成グリセリンは、石油由来というイメージこそ悪いですが、不純物が植物由来に比べて極端に低い分、医薬品の品質を劣化させることはなく、医薬向けは合成グリセリンというのが
常識となっています。
なお、化粧品向けは通常植物グリセリンとなります。
安いし、イメージがよいから相当品質が悪くない限り、植物由来を使います。
薬局で売られているグリセリンも植物由来ばかりです。