HOW TO 講座

乳化について その1

乳化というのは簡単に説明すると、水が油に溶けているもしくは油が水に微粒子となって溶けている状態です。

身近な例が牛乳で、脂肪分の周りにたんぱく質やレシチンなどで覆われて、油が水に溶けています。バターなどでは逆に油の中に水分が溶けている状態です。

ただ、油が水に溶けているというのは、非常に不安定な状況です。
溶けている粒子は衝突して、だんだん大きくなり、最後には水と油の2層に分かれてしまいます。

ではどうすれば乳化の破壊を食い止めれるのか。
一般に粒子を小さくすると衝突回数が減り、乳化は安定化します。

牛乳がよい例で牛から絞った状態だと、不安定な状態で加熱殺菌したりすると、だんだん油分が分離気味となりますが、牛乳をミキサー処理すれば脂肪球が小さくなり、120℃に加熱しても安定なものとなります。

なお、油の種類にかかわらず、粒子の大きさによって外観がだいたい決まります。
粒子が細かいと透明から青色透明に、そして粒子が大きくなると牛乳のように白くなります。
スクワランでもオリーブオイルでも鉱物油でも、基本的に粒子の大きさによって、色が変わります。

さらに粒子が細かくなると肌に塗ったときの感触も変わります。
粒子が細かいほど、粘度がなく、浸透感や軽いテクスチャとなり、粒子が大きいと皮膜感などが出てきます。

ただし、細かければ細かいほどよいというわけでもなくて、浸透感が強すぎると、塗った直後は良かったりするのですが、数時間経つとなんだか肌についているのかどうかという存在感が弱くなります。

粒子を細かくするナノ乳化は、企業によって高圧乳化や超高圧乳化など呼び名は違いますが、高圧をかけてミキサーで細かくするという原理に違いはありません。

数年前に資生堂のリラックスウォーターという商品がありました。
200mlで2000円程度販売されていた商品で、乳液のような化粧水というフレーズでした。

乳液と同等の油分量で、通常の乳化方法だと牛乳状の白い外観となるところが、高圧乳化することで、青い透明感のあるようになることから、乳液より化粧水の方が近く「乳液のような化粧水」という表現になったのだと思います。

この商品の乳化剤は、面白いことにカリ石鹸を使っていました。
具体的には、ベヘン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ベヘン酸、ステアリン酸となります。

正直、皮肉だなと感じたのですが、同じ石鹸という乳化剤を使いながら、某石鹸屋のクリームの方が内容量が1/6でありながら価格は同じ程度。
しかも、1g当たりの製造コストは設備費を含めて資生堂の方が大幅にかかっています。

乳化装置の違いで、同じ油分の量でも粒子が大きいものは、クリーム状に、高圧乳化の場合は、細かくなるので、粘度が少なくなり、化粧水状となります。

石鹸クリームを使っている方には、このリラックスウォーターを一度はお試しいただきたかったのですが、あまり売れなかったせいか、このブランドはもうありません。
(ナノ乳化というのは、一切宣伝に出しませんでした)

最近はナノ乳化が流行していますが、成分をナノ化することで、化粧品の価格が少し高くなることはあっても、大幅に高くなることはないので、そのような商品はちょっとおかしいとお考えください。