HOW TO 講座

たかがパラベン、されどパラベン

化粧品の防腐については、どこのメーカーも頭を悩ますところです。

食品のように開封後すぐに使わなければ、防腐剤を配合しなくてもやっていけるのですが、なかなか難しいのが現状です。

それで、多く使われるのが、パラベンです。メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンと種類はいろいろありますが、メチルパラベンは水に0.25%溶解し、ほかのパラベン類は油によく溶けます。
メチルパラベンの防腐剤としての役割を果たすには0.2%必要なので、結構溶解度はぎりぎりのところで使われています。ただ、エタノールやBGなどの成分が入っていれば、パラベンの溶解性は高まります。

パラベンは日本でも昨年色々と騒がれました。それより前にヨーロッパでは乳がんの原因になるのではないかという疑惑が生じて、ヨーロッパでは一気にノンパラベン化粧品が発売されました。
日本では自然化粧品という定義はあいまいですが、ドイツなどではこの定義がしっかりしていて、合成成分を配合して違反したブランドはテレビなどでも報道されて、ブランドの崩壊が起こるなど結構シビアなものです。

そのパラベンですが、この防腐成分を抜いて化粧品を組み立てようとするとかなり大変な作業となります。
なかなかパラベンほど色々な菌に効く防腐剤というのはなくて、他の防腐成分を組み合わせて、
防腐を考えるというのは、簡単そうで、面倒くさいことでもあり、ファンケル社が登場するまでは、防腐剤ではパラベン一本というのが当然のことでした。

パラベン以外の防腐剤でいくとなると、幅広い菌に効くのはフェノキシエタノールやヘキサンジオールなどになりますが、いずれもたくさん配合すると刺激がでるため、濃度には注意が必要です。

パラベンは配合量が多いと、開封後1年でも化粧品は使えますが、フェノキシエタノールやヘキサンジオールは、とてもそんなレベルの防腐効果はなくては、毎日使わない化粧品や季節性の化粧品などには、結局棒効果の高いパラベンが使用されることとなります。

ただ、それでもフェノキシエタノールなどを使用しようとすると、芳香臭などがあるため大量に配合することはできず、他の防腐効果のある成分を利用して、防腐系を組み立てていく必要があります。
これが簡単そうで、結構難しいため、案外とフェノキシエタノールはあまり使われていません。

要はパラベンを使用するというのは、化粧品の処方技術者にとっては一番楽な選択なんですね。
教科書的には、パラベンよりフェノキシエタノールの方が防腐効果を発揮させるために必要な量が多く、フェノキシエタノールの方が防腐剤の配合量が多くなると考えられますが、実際のところはそんな単純なものではなくて、パラベンはオイルに溶解するクリーム系の防腐には結構量が必要になることも多いのです。
(防腐剤は水系で存在する必要があり、予めオイル分に溶けるパラベンを見積もって配合するため、クリーム系などではパラベンの配合量が増える)

パラベンなど防腐剤を一切使わないとなると、加熱滅菌を利用するという手もあります。少量の容器に入れて、開封後の期間を短くし菌が繁殖するまでに使いきるというやり方です。

単純に防腐剤を入れないと、空気中の菌が化粧品をつめるときに入るので、すぐに使い切る必要があるのですが、レトルト食品を作るような装置で、化粧品を作れば常温でも3年以上保存可能になります。

一時期、これと同じやり方で、手作り化粧品を提案したこともありました。
特殊なガラス容器につめて、圧力鍋で滅菌するだけです。家庭の圧力鍋はレトルト製造装置とおなじ120℃まで加熱することができるので、無添加で常温保存可能な化粧品ができあがります。
ただ、難点は面倒くささで、これでは長続きしないんですね。

なかなか防腐剤フリーというのは難しくて、防腐剤を使うにしてもやはり難しいです。
ちなみに、ドイツの自然派化粧品というのは、防腐剤にはエタノールを使用します。
肌が強い人はよいのですが、弱いときついかもしれませんね。