HOW TO 講座

界面活性剤の安全性について その1

安全性というのは、化粧品のみならず食品そのほか、我々の環境を取り巻く中で多くの方にとって、大変大きな関心事となっています。

今までは、誰か知識のある方がこれは安全とかあれは危険というように判断して、それを消費者が鵜呑みにするような構図が多かったと思います。また、情報の発信についても化粧品の場合は、石鹸寄り、合成寄り、どちらにも属さない陣営と安全データの出所により、安全性に対する評価が変わったりすることもあります。

化粧品を取り巻く環境というのは、行政が化粧品の認可からすべて取り仕切っていた状態から、全成分表示に伴い必要最低限の規制のみ行うという大転換が図られました。

企業の自己責任により色々な成分が使えるようになりましたが、その反面今まで使われなったような成分まで使用されるようになり、わけのわからない成分が増えましたが、情報については相変わらず企業にとって都合の良いものばかりという感じがしています。

そこでデータを集めるにあたってはできるだけ多くの文献を調査して、文献名を明記して、あとで調査できるようにしました。
(国会図書館のインターネットサービスを利用すれば自宅で文献が取り寄せ可能です)

なお、データは5%に希釈したり(実使用濃度を想定)、100%濃度で測定していたりとばらばらです。

たとえば非イオン界面活性剤は100%でも液体なので、そのままの濃度でパッチテストなどできますが、シャンプーやリンス、石鹸などは100%だと固体のものが多く、そのままではテストできないため、1%や5%に薄めて水溶液で行ったりするのが一般的です。

どんな物質においても濃度が高くなると刺激が高くなるのは当然です。皮膚に塗ってできる刺激もそうですし、食べて出てくる経口毒性もそうです。どんな物質でも毒でなくすのは濃度だけで、たとえば目に刺激がある界面活性剤もある濃度では刺激が出ても、ある一定濃度以下では細胞の耐性があって、刺激を感じません。

一般的に界面活性剤の刺激は、リンスに使われる陽イオン系界面活性剤が一番大きく、次にシャンプーに使われる陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤そして非イオン界面活性剤の順に強くなります。

ただ、シャンプーやリンスに使われる界面活性剤は洗い流すのが前提のものです。
それに対してクリームは洗い流さずにずーとつけておくため非常に安全性が問われるものですが、シャンプーに使われるステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、台所洗剤の主成分であるラウレス-7(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)など安全性に問題がある成分も最近は使われ始めているので、注意が必要です。

また、クリームや美容液などでもナノを謳い文句するものは、ナノ化したオイル分の量が多いほど、界面活性剤の量が増えます。もともと昔からある透明化粧水などにナノ化したオイルを配合していましたので、ナノ化するということは特に新しい技術ではありません。

ただ、乳化するためのオイルの粒子が小さくなればなるほど、粒子の表面積は増えるためその分乳化剤(界面活性剤)が必要となります。

たとえば、300nmの乳液(外観が白いミルク状)ならオイルに対して乳化剤の量は10分の1でも安定ですが、100nm以下の透明なナノ化オイルにするにはオイルと同じ量から3倍くらいの乳化剤の量が必要となり、ナノ化粧品の問題点の1つでもあります。

配合するナノ化オイルの量によっては、シャンプーやクレンジング剤と同じくらい合成界面活性剤の濃度が高いものもあります。
なお、感触的には界面活性剤が大量に配合されていると肌に指を当てても吸い付くようにすべっていきますので、安全性を別にすれば、ナノ化粧品は好まれる感触となります。

保湿効果を高めるために油分を配合した化粧水は通常オイル(合成オイルやシリコンオイル、スクワラン)をナノ化して透明にしています。この場合、いちいちオイルをナノ化しているとは企業は宣伝しませんので、何もビタミンC誘導体やビタミン類だけでなく、普通のオイルもナノ化して化粧水に配合することが多いです。

安全性というのは、界面活性剤の種類だけでなく、濃度も関係しますので、乳液やクリームの外観でどれだけ界面活性剤を使っているのかもポイントになります。
乳液やクリームについては、感触は悪くなりますが、界面活性剤を使わずに高分子ポリマーでオイルを乳化するということも一般的となっています。実は高分子で乳化する方が簡単なので、最近は高分子で乳化した乳液やジェルなどが増えてきています。

ただ、純粋な高分子乳化だと感触が悪くなるので、いくらか界面活性剤を配合することもしばしばです。