手作り石鹸について
手作り石鹸の遊離アルカリを調べましたので、以下の通りまとめて見ました。
手作り石鹸は油脂と苛性ソーダと混ぜたあと、型に入れてそのあと放置することで熟成を行い、油脂と苛性ソーダを石鹸に変えます。温度をあまりかけないのでコールドプロセスと呼ばれます。
さて、この製造法では遊離アルカリがあってもわからない場合もあります。
遊離アルカリが残っている場合は刺激があるため、市販の石鹸ではその量は厳しく規定されています。
それで、手作り石鹸の場合も遊離アルカリがあるのかどうか調べてみました。
遊離アルカリ | 未反応オイル分 | 使用オイル | |
---|---|---|---|
石鹸1 | なし | 2.2% | オリーブ、ヤシ、パーム |
石鹸2 | なし | 2.7% | オリーブ、ヤシ、パーム |
石鹸3 | なし | 未測定 | オリーブ、ヤシ、パーム |
石鹸4 | なし | 未測定 | オリーブ、ヤシ、パーム、シアバター |
石鹸5 | なし | 未測定 | ククイナッツ、オリーブ、ヤシ、パーム、マカデミア |
石鹸6 | なし | 1.0% | ヤシ、パーム、ヒマシ、ミリスチン酸 |
石鹸7 | なし | 0.7% | ヤシ、オリーブ、パーム、ヒマシ、ミリスチン酸 |
石鹸8 | なし | 2.2% | マカデミア、ヒマシ、ミリスチン酸 |
石鹸9 | なし | 3.7% | ひまわり、マカダミア、ヒマシ、ミリスチン酸 |
石鹸10 | なし | 未測定 | ヤシ、パーム、ひまわり、マカダミア、ククイナッツ |
石鹸11 | なし | 2.6% | ヤシ、パーム、ひまわり、セサミ |
石鹸12 | なし | 3.6% | パーム核、パーム、米、ひまわり |
石鹸13 | なし | 未測定 | ヤシ、パーム核、パーム、ひまわり、マカダミア |
石鹸14 | なし | 3.6% | ヤシ、パーム核、パーム、ひまわり、アボガド |
石鹸15 | なし | 未測定 | ヤシ、レッドパーム、ひまわり、ヒマシ |
石鹸16 | なし | 未測定 | ヤシ、マンゴーバター |
苛性ソーダはオイルのケン化価に対して90~95%でした。
遊離アルカリ、未反応オイル分(石油エーテル可溶分)はJIS石鹸試験法に準じて測定しました。
ヤシはココナッツ、ヒマシはキャスター、ゴマはセサミとも呼びます。
パーム核とヤシは似たような脂肪酸組成です。レッドパームはパーム油の未精製オイルです。
結果はいずれも遊離アルカリはありませんでした。
石鹸は1.オイルをグリセリンと脂肪酸に分ける反応と2.脂肪酸と苛性ソーダが反応して石鹸になる。2つの反応によって作られます。
つまり、1番目の反応は未反応オイル分の少なさからもうまくいっていると考えられます。
ただ、この遊離アルカリ測定法には弱点があって、あくまで遊離アルカリの割合が脂肪酸より多い場合のみ検出することができるという点です。
つまり、遊離アルカリの小さな粒があっても、脂肪酸の割合より小さい場合は、使うときに小さな粒が刺激となっても、遊離アルカリの測定値には反映しません。
しかしながら、一度作った石鹸を薄く切って、たとえば砂糖やグリセリン、そしてエタノール水溶液に加熱して溶かして再び型入れして、透明石鹸にすれば確実に遊離アルカリのない石鹸となります。
これは遊離アルカリの粒があっても溶かしたときに脂肪酸と即座に反応して石鹸になるためです。
なお、石鹸は表面から使っていきますので、苛性ソーダの粒が残っていてもすぐに空気中の二酸化炭素と反応して、炭酸ソーダになり、それがまた分解して重曹になっていきます。
あわ立てネットなどで泡を立てて使えば、遊離アルカリの刺激はほとんどないのではないかと考えています。
また、苛性カリで液体石鹸を作りpH試験紙でpH9くらいを確認すれば遊離アルカリのない石鹸を作ることが可能です。素人が確実に遊離アルカリのない石鹸を作る場合はこちらがよいでしょう。ミリスチン酸とステアリン酸を苛性カリでケン化することで、洗顔クリームを作ることも可能です。
市販石鹸の製造法
市販の石鹸は脂肪酸中和法での製造がメインとなりますが、昔ながらの釜たき法で作られる場合もあります。この場合は、原料油脂を仕込んだあと、撹拌しながら加熱して苛性ソーダの水溶液を加えていきます。
油脂はまずグリセリンと脂肪酸に分かれて、さらに脂肪酸が苛性ソーダと反応して石鹸となります。
通常は過剰の苛性ソーダを加えて反応を行い、そして塩や食塩水を加えると、石鹸は食塩水に溶けにくいため、上に浮き、苛性ソーダは食塩水に溶けるため、過剰の苛性ソーダと石鹸を分離することができます。何度か苛性ソーダや食塩水を加えて、未反応の油脂を石鹸に変えて、上質の石鹸を得ることできます。
できた石鹸は水分を30%含み80℃以上で液状を保ちます。こうして得られた石鹸素地に香料などを加えて、混合機でよく混合撹拌して、ロールで石鹸を延ばし、さらに練り上げた後、棒状に押し出し、成型して型打ちして、包装することで石鹸が得られます。
スーパーファッド型石鹸
純石鹸などの場合は、石鹸分が99%や100%と石鹸だけとなりますが、化粧石鹸の多くは、スーパーファッド(過脂肪)石鹸と呼ばれます。
ラウリン酸やミリスチン酸、または混合脂肪酸を加えることで、石鹸の泡がクリーミーさをもち、泡の弾力もアップします。だいたい、数パーセントから10%程度まで配合されます。
脂肪酸自体は消泡剤として働くのですが、石鹸と一定割合混ぜると泡の膜強化剤として働きます。
資生堂のサボンドールの成分表示は石ケン素地,水,ラウリン酸,香料の順ですし、花王のホワイトは石鹸素地、パーム脂肪酸、水の順です。
過脂肪石鹸は成分表示の順で脂肪酸の順位が上位であるほど過脂肪割合が高くなります。
透明石鹸
市販の透明石鹸は、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、オリーブ油、エタノールを反応釜に仕込んで、そこへ加熱ししながら撹拌して、苛性ソーダを加えてケン化します。ケン化が終了した後は、砂糖を石鹸の10%くらいになるように加えて、型に流し込んで固めます。2ヶ月ほど熟成したら切断して、型打ちして包装することで透明石鹸となります。
グリセリンや砂糖が皮膚保護剤になるのでマイルドとなり、主に洗顔用として使われます。
測定した各石鹸の作り方(製作した方に教えていただきました)
■ 石鹸1
前田京子氏の著書 「オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る―「お風呂の愉しみ」
テキストブック
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4870314495/ref=pd_bxgy_text_2/250-8326627-2156267
を参考に作った物です。道具や型などは全て似たような物を使用しています。
手順は下記の通りです。
- 苛性ソーダを精製水で溶かし、40℃まで冷ます。
- ココナッツ油とパーム油をボウルに入れ、湯煎で完全に溶かし、
オリーブオイルを加えて更に湯煎で40℃にする。
(最初にオリーブオイルも加えてから湯煎にかけるとココナッツ油やパーム油がなかなか溶けない為先に溶かします。) - 油と苛性ソーダ液を合わせ、泡立て器でかき混ぜる。
苛性ソーダ液は穴あきのガラス瓶を用いて少しずつ加えてゆきます。
撹拌時間は苛性ソーダ駅液投入終了後から約20分間。
20分撹拌したらあとはボウルにラップを被せてしばらく(8~12時間)置いておく。 - 泡立て器を持ち上げたときにしたたり落ちるタネの跡が
残るくらいまで固く(トレースが出た状態)なったらタネの温度を測る。
タネの温度が低い場合は湯煎で35~40℃程度まで温めてから型(牛乳パック2枚重ねの型)に入れる。 - 型の上面にキッチンペーパーとラップを被せ、輪ゴムで止め、
全体をプチプチ(荷物のクッション材によく使われるやつです)で包み、
保温箱(発泡スチロールの箱)に入れて保温し、固める。 - 2~3日後、タネがしっかり固まっていたら、保温箱から取り出し、光の当たらない風通しの良い場所に移し、2~3日(長くて1週間)乾燥させる。
我が家では南向きのベランダに置いてあるアイリスオーヤマの木製ロッカーに入れています。 - 型から出し、7~8個に切り分けて再度乾燥させる。
- 1ヶ月寝かせて出来上がり。
トレースが出てからタネの温度を測り、温度が低ければ湯煎で約35~40℃に温度を上げてから型入れをしたのは私の経験上ですが、タネの温度が低いまま型入れすると石鹸に粉がふき、白くもろい石鹸になりやすかったためです。
そこで型入れ直前に温度を上げるとソレが防げたのでそれ以来は実施しています。
あとキッチンペーパーは湿気取り用、ラップは空気を遮断(!?)することで石鹸の表面が白くなるの(ソーダ灰?)を防ぐ為、プチプチは保温の為(保温箱が大きいので念のため)です。
■ 石鹸2
貝印のハンディミキサーを使用して作った石鹸です。
こちらはかなり我流の方法です。
手順は下記の通りです。
- 苛性ソーダを精製水で溶かし、冷却する(温度は測りません)
- ココナッツ油とパーム油をボウルに入れ、湯煎で完全に溶かし、
オリーブオイルを加える(温度は測りません)。 - 2の中に苛性ソーダ液を一度に入れ、泡立て器で軽くかき混ぜる。
- 3をハンディミキサーで約1分撹拌した後、再度泡立て器で全体を混ぜ、これを数回繰り返す。
- 20~30分でトレースが出るので、トレースが出たら型(牛乳パック2枚重ねの型)に入れる。
- 型の上面にキッチンペーパーを被せ、輪ゴムで止め、室温で1日放置。
(冬場など、外気温が低い季節は保温箱に入れ、蓋を少し開けておく)
翌日ラップを被せ、全体をプチプチ(荷物のクッション材によく使われるやつです)で包み、保温箱(発泡スチロールの箱)に入れて保温し、固める。 - 2~3日後、タネがしっかり固まっていたら、保温箱から取り出し、
光の当たらない風通しの良い場所に移し、2~3日(長くて1週間)乾燥させる。
我が家では南向きのベランダに置いてあるアイリスオーヤマの木製ロッカーに入れています。 - 型から出し、7~8個に切り分けて再度乾燥させる。
- 1ヶ月寝かせて出来上がり。
手順の意味合いは下記の通り。
1.2で温度を40度に合わせないのはハンディミキサーで撹拌するとタネの温度がかなり上昇するのであまり温度あわせの意味が無さそうだからです。
油脂と苛性ソーダ液を20℃に合わせたり、氷水の入ったボウルをあてがいながら撹拌したりしましたが、どの方法を用いても少しすればタネの温度はかなり上昇してしまいましたので…(^^;)
それからは、とりあえず固体になりやすい油脂が溶けていればOKとしています。(^^;)
3.で苛性ソーダ液を一度に入れるのも、ハンディミキサーを使用しているので少しずつ入れなくてもしっかりと撹拌できる(と思う)為です。
4.は、ハンディミキサーだけだと混ぜムラが生じる為、泡立て器と併用することで混ぜムラを無くしています。
6.は、最初から保温箱に入れると保温中にタネの温度が上がりすぎて石鹸の中央が噴火したように盛り上がり、表面がでこぼこになって見た目がよろしく無いからです。
これも、型入れ直前にタネを20℃、40℃等に下げてから試して見ましたが、結果は同じで、結局常温放置が一番表面が綺麗になりました。
ただ、ずっと常温放置にすると石鹸の外側が内側よりも白くなる場合があるので外気温による温度差が原因しているのかと思い、保温箱に入れています。
■ 石鹸6~9
鍋にすべてのオイルとミリスチン酸を入れ、ミリスチン酸を溶かし(温め過ぎてしまうので85℃くらい?)、45℃まで冷ます。水に苛性ソーダを入れて溶かし、45℃まで冷やす。
(石鹸9を作ったときは温度計がなかったため、60℃くらいに冷ましたかもしれません。トレースが早かったです。)
プラスチックの容器にオイルと苛性ソーダ水を入れる。一気に入れるとミリスチン酸だと思うのですが、少し固まって沈むので、泡だて器でちょっとだけ混ぜてから蓋をし、最初の10分間は集中的に、30~40分間(ドロッとするまで) 容器をあまり休まずに振り続けることで撹拌する。(ミリスチン酸を添加するとトレースが早くでます。)
温度管理 (湯煎)はしないので、型入れ時には冷めきっています。
(型入れ後の保温については下記の<レシピ&保温>でそれぞれに詳しく書きました。)
ラップで空気との接触をなくすように蓋をし、4、5日間そのままにした後、型から出し切り分け、乾燥(熟成)させる。(蓋をしなくてもソーダー灰が付いたことはありません。よく言われる石鹸の汗についても、石鹸9だけが熟成3ヶ月位で湿気もないのに突然かき始めただけです。)型に入れた後から熟成期間及び保存は暗所に置いておく。最低3週間待って使います。
【レシピ&保温】
すべてコールドプロセスで、ディスカウント率は5%。
5%以下にはならないように作りました。トレース時に添加したオイルはディスカウント率に含みません。気候は日本に比べてかなり乾燥しています。ちなみにオーストラリアですので四季は逆になります。
■ 石鹸6
苛性ソーダ30g、オイル200g:ココナッツ100g(オイル総量に対して50%)、パーム56g(28%)、キャスター40g(20%)、ミリスチン酸4g(2%)熟成期間:5週間
■ 石鹸7
苛性ソーダ46g、オイル306g:ココナッツ138g(45.1%)、オリーブ96g(31.4%)、パーム30g(9.8%)、キャスター30g(9.8%)、ミリスチン酸12g(3.9%)熟成期間:4.5ヶ月
■ 石鹸8
苛性ソーダ40g、オイル300g:マカダミアオイル270g(90%)、キャスターオイル16g(5.3%)、ミリスチン酸14g(4.7%)(トレース時に添加:シアバター大さじ1、ケルプ大さじ2、オートミール大さじ2) 熟成期間:4.5ヶ月
■ 石鹸9
苛性ソーダ50g、オイル400g: ひまわり油264g(66%)、マカダミアオイル86g (21.5%)、キャスターオイル38g (9.5%)、ミリスチン酸12g(3%)
(トレース時に添加:ホホバオイル8g、蜂蜜10g、尿素20g、ケルプ10g) 熟成期間: 6.5ヶ月
(ご注意:尿素は石鹸に配合するとアンモニアとなって、刺激の原因となりますので、お勧めしません)