HOW TO 講座

生薬エキスのパッチテストについて

手作りの生薬エキスというのは侮れなくて、抽出エキスを数パーセントに
薄めたものが、メラニン生成を阻止するチロシナーゼ阻害度からみると
ほとんど市販の化粧水と変わりません。

つまり、それだけ有効成分の濃度が高いということですので、
安全性についても検討していく必要があります。
通常、化粧品メーカーは、生薬エキスを商品に配合する際に
必ず安全性データを原料メーカーに要求します。安全性データというのは、
動物実験や人間でのパッチテスト、培養細胞を使ったデータですが、
これがないと見向きもしません。安全かどうかわからないものを
使うわけにはいかないからです。

たとえば、生薬エキスの安全性データというのは、原液を1%程度に
薄めたもののパッチテスト結果などになります。
ここでエキス原液というのは、エキス固形分として0.5~1%のものです。
エキス原液といっても本当のエキス濃度は1%も満たないもので、
さらにそれを1%に薄めてパッチテストなどを行うわけです。
つまり、エキス固形分の濃度としては0.01%となります。

たいていの生薬エキスは何かしらの効果を持っていますが、
濃度が高くなれば、細胞毒性がでてきて、細胞死を導いてしまうことは
珍しくありません。つまり、生薬エキスの場合、濃度が高ければ、
その分効果が高いと思われがちでずが、実際は肌を痛めつけることになります。
たとえばいくらチョコレートが好きな人でも毎日何キロも無理やり
食べさせられ続けたら、病気になってしまいますよね。
肌でも同じことで、生理活性の高い成分が細胞内へ多く入りすぎると
細胞の機能がおかしくなり、細胞は死んでいきます。

しかしながら、市販の生薬原液エキスと称されて販売されているもので
安全性に関するデータをつけて売るところはありません。
基本的に化粧品というのは、安全性を化粧品メーカーが保証するものです。
保証を行うためには濃度を薄くして、誰が使っても安全なものとする必要があり
そのためには原液エキスと謳いながら現実は原料メーカーから購入したエキスを
薄めて売るところが大勢を占めると考えています。

もちろん、原料メーカーから直接買ったエキスをそのまま売るところも
あるかもしれませんが、その場合は安全性についてのユーザーへの
情報開示という点で問題になるかもしれません。

それは、通常、○○エキスというのはメーカーがたとえ薄めて使ってくださいと
お願いしても、必ず原液で使う人がおられますし、誰でもそのような方が
おられることは予想できます。それで何か問題が起こって、安全性の根拠を
提示できなければ、メーカーにとってはややこしい事態になります。

このとき原料メーカーからもらった安全性データーも参考にされるのでしょうが、
原料メーカーの安全性データーが原液を100倍に薄めたものであるのに、
原液で売っていれば何ら申し開きができないということです。

基本的に化粧品メーカーの人間の多くは生薬エキスの濃度が高いと
細胞毒性が出ると考えることが常識となっており(ただし、安全性試験を
行わない会社は知らない)、大手メーカーになるほどエキスの濃度は
薄くなることが多いです。(大手メーカーの薬用美白化粧品などは、
美白の有効成分を植物エキスから取り出して、単一成分にまで精製したものを
配合することが多く、単純にすべての商品のエキス濃度が薄いというわけでは
ありません。そういう意味では植物エキスの固形分濃度がもっとも高いのは
エラグ酸などを配合した薬用化粧品となります。)

さて、手作りの生薬エキスは市販の原液エキスと違って、濃度も高いので、
化粧水に配合する場合は十分に気をつける必要があります。

濃度が高いと効果が高くなると思いがちですが、実際には肌荒れを引き起こす
ことが多く、濃度と効果は比例するどころか反比例していきます。
そのため、どのくらいまでの濃度だと安全に使えるのかという
基礎的なデーターが必要であると考えています。
高濃度配合=効果が高いではありませんので。

生薬エキスは昔からあるものですが、高濃度配合で成功した
メーカーはありません。生薬エキスを5%程度配合して、濃度が高いと
言っているだけのところが多いです。生薬エキス原液を5%配合していても、
本当の生薬エキスの固形分としては0.05%に過ぎないのです・・(^^;
ただ、0.05%は細胞毒性が出始める微妙な濃度なので、グリセリンやBG、
ビタミンC誘導体などのような高濃度に配合できるものとは違います。

残念なことにユーザーサイドに立った安全性データの情報提供というのは、
大変費用がかかるもので、市販の化粧品メーカーを見てもできているところは
少ないと思います。せいぜい○○は危険とか言っている程度でしょう。

それがわかりやすくて受け入れられやすいからですが、ただ、これからも
それでいいのかなと考えてしまいます。生薬化粧水は趣味の化粧水である以上、
いろいろ考えて手作り化粧水を作っていただきたいので、
何の情報提供も行なわない会社と一緒では情けないという思いもあり、
徐々にできるところからやっていきたいと考えています。

エキス原液を買うときに安全性データーがないのは
おかしいと思えるようになったら、レベルが上がってきた証拠です。

さて、長くなりましたが、試験機関に依頼して行ったパッチテストの結果です
生薬を買い求めガイドラインに沿ってBG抽出したものを
そのまま提供して、5%に希釈してパッチテストを行いました。

クジンエキス5%、ユキノシタエキス5%、ローズピンクエキス5%、
カンゾウエキス5%希釈いずれも20代2名、30代8名、40代5名、
50代3名、60代2名の合計日本人20名で24時間貼付けパッチテストを
行った結果無刺激と判定。

ソウハクヒエキス5%、カンゾウ、ソウハクヒ、ローズ混合エキス5%、
ユキノシタ、ソウハクヒ、カンゾウ、ボタンピ混合エキス5%
20代13名、30代 2名、40代1名、50代3名、80代1名の
合計日本人20名で24時間貼付けパッチテストを行った結果無刺激と判定。

いずれも無刺激と判定されております。
ただ、これですべての方に対して刺激がないということではなくて
人によっては5%でも刺激ができることがあり、
濃度を高くせずに使っていただくようにお願いします。