HOW TO 講座

菌と食品について

化粧品で水分を含んでいるものは、どうしても菌が発生します。
菌が発生すると、白く濁ったり、沈殿物がでたり見た目が変わります。
また時には臭いが発生したり、プラスチック容器だと
菌が作ったガスで膨らんだりすることもあります。

ただ、食中毒や皮膚病を起こす菌の中には異変を起こさないものも
あるので、なかなかやっかいです。

人に悪さする菌を病原菌と呼びますが、彼らは菌の中でも進化していて
人間の免疫反応に対して打ち勝つように進化を遂げています。

外来からやってきた菌を排除するため、白血球は活性酸素や
過酸化水素、次亜塩素酸などを放出して殺菌して菌を殺そうとしますが、
病原菌の中にはこれらに対抗して抗酸化物質を作り
酸化攻撃を無力化してしまうものもいます。

ちなみに次亜塩素酸というと、キッチンハイターなどの主成分で、
ケミカル系漂白剤として、嫌われることもありますが、
実際は人体の中で活躍している殺菌剤でもあります。
そして白血球が次亜塩素酸を作れない遺伝子病の人は、
殺菌力が弱いので、長生きできないことがわかっています。

さて、わけのわからない菌から化粧品を守るためには、
繁殖するまえに使い切るか、菌が侵入しても繁殖できないような
環境であるかが重要となります。

前回は、その処方段階での対策として、抗菌性成分の
配合を提案しました。手作り化粧品は食品感覚となりやすいのですが
ここで今一度食品と菌について考えてみましょう。

食品はもともと菌がいくらかいるのが前提で販売されています。
よく賞味期間というのが、表示されていますが、あの賞味期間というのは、
食品を常温保存して菌が1gあたりだいたい100万個程度に
増殖するまでの日数を元に設定されます。そして1000万個にまで
増えると食べたときの味や臭いがおかしくなり始めます。

つまり、食品は賞味期間内でどんどん菌が増えていきますので、
賞味期間の一番最後の頃と製造日とは菌の数がぜんぜん違います。
まあ、賞味期限というとおいしく食べれる期間とも思えますが、
微生物学的な根拠によって農水省が作ったガイドラインに沿って、
食品会社が決めているのが実情です。
(いい加減な企業が設定した賞味期間では、期間内に菌が増殖しすぎて
食べるのに適さないこともあります)

さて、化粧品であまり製造日というのが、重要視されないのは、
食品と違って菌に対する備え(抗菌剤を配合すること)がで
きているという点が挙げられます。

これにより万が一、菌が化粧品に侵入しても撃退できるように
抗菌性成分を配合することで対応していくわけです。

そのため、未開封なら数年程度はたいていの化粧品は
大丈夫のため、製造日などは消費者にわかるように表示されません。

ちなみに化粧品会社が鮮度を重視した化粧品作りを行うにしても
作った化粧品が菌汚染がされていないことを確認するための
菌検査には最低5日は必要です。
安全性を確認してからお客さんに届けるとしても2日かかるので、
最短で1週間はかかります。
さらに防腐剤無添加で作った場合、室温で数年保存しても菌が繁殖しない
保証をするためには2週間培養して確認する必要があります。

食品では製造日かもしくは次の日の商品を購入することができますが、
化粧品ではどんなに早くても菌検査を行っていると、
製造日から1週間や2週間は過ぎてしまいます。
逆に製造日から数日しか経っていないのにすぐに手に入るとなると
菌検査をやっていないだろうと素人でもわかってしまいます。
(食品は大腸菌しか調べてなかったり、食中毒菌がいるかどうかの
確認になることが多いので、すばやい出荷が可能です)

ちなみに食品では開封するまでは数年も保存料なしで大丈夫なものも
あります。たとえば、レトルト食品などが代表例で120℃で殺菌
することで、食品中の菌を死滅させて、長期の保存を可能としています。
牛乳でもおなじことで風味を重視した牛乳は殺菌温度が60℃のため
冷蔵庫保存でもすぐに賞味期限がきますが、150℃で殺菌して
内面をアルミコーティングした機密性の高い容器に無菌充填し、
さらに2週間の菌検査を経て無菌保証された
ロングライフ牛乳になると室温保存が可能となります。
(菌がいないので、何日たっても菌が繁殖せず腐敗しないため)

化粧品でも耐熱容器に充填して120℃で殺菌し、
防腐剤無添加を実現したものがありますが、ちょっとお高いですね。

残念ながら化粧品は熱に弱い有効成分が多いので、簡単には食品の
加熱滅菌処理のようにはいきませんが、
ただ、無菌保証した商品を安価で提供できる大手食品会社の技術力には
いろいろと学ぶことが多いと感じています。