HOW TO 講座

防腐について

手作り化粧水の弱点というのは、やはり防腐です。
防腐剤無配合ですと冷蔵庫に保存して4日~1週間程度しかもちません。

冷蔵庫で保存する理由は、いわゆる病原菌のほとんどが温度が下がると
繁殖しにくいからです。ただ、他の菌が繁殖するために
期限を設定して、使い切る必要があります。

菌が発生すると、白くにごったり、沈殿がおきたり、分離したり、
容器がガスで膨らんだり、マリモのようなものができたりと
異常な事態になります。通常、このような状態になるには1ml当り
1000万個以上の菌が繁殖していますので、見た目で異常が出た場合に
使用を中止していては遅いのです。

そのため、化粧水が透明で何の異常がないように見える段階で
あくまで期限を設定(たとえば4日から1週間)して、
どんどん作り直していく必要があります。

逆に防腐効果のあるものを配合した場合はどうなるのでしょうか。

手作り化粧水で使える防腐剤というのは、限られていて
エタノール、BG、そして資生堂の肌水でしょうか。

ほかに色々防腐効果があるものが、販売されているようですが、
どの程度の量をいれて、どの菌に効くかという基本的な情報が
公開されていません。それでは使えないのです。

結論から先に言いますと、防腐剤を配合して防腐効果があるかどうか
開発段階で確認する方法に、防腐効力テストというものがあります。

化粧品で過去に問題を起こした病原菌を化粧水に入れて、
繁殖するかどうか確認するわけです。

具体的には菌を入れた化粧水を25度で保存して1週間後、1ヶ月後に
菌の数を測定して、防腐力を測定します。
そうすることで、メーカーはお客様がお買い求めになった化粧水が
使い切る間に菌が発生しないことを保証することができます。

化粧水に配合する成分によっては防腐剤の効果を打ち消すようなものが
あるために、そういう成分を配合しても防腐効果があるかどうかを確認します。

この防腐効力試験は医薬品では必要なのですが、化粧品に対しては厚生労働省は
特に方法を定めていないため、メーカーは独自の方法やアメリカ化粧品工業会の
方法を使って、テストを行います。

生薬化粧水に応用できる防腐系として、
1.資生堂の肌水を精製水で80%に薄めたもの、
2.エタノール30%+水70%、3.BG30%+水70%、
4.エタノール15%+BG10%+水25%、
5.肌水50%+エタノール10%+トゥヴェールヒアルロン酸10%
+BG5%+水25%
の5種類の組合せで、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジタ、黒かびを
化粧水1ml当り100万個接種して2週間後に生菌数を測定して、
さらに1ml当り100万個再接種して2週間後に生菌数を測定しました。
*水の部分は生薬エキスやベタインの配合に置換えて使います。
たとえば、5の処方だと水25%を生薬エキス5%+水20%という具合です。

結果はいずれも菌は0となりましたので、上記の防腐系である限り心配は要りません。
つまり室温に保存していただいて3週間程度で使い切っていただければよいでしょう。
ただし、BGはアイティオー製を使用しています。他社のBGでは同じ効果がでるか
わりかませんのでご注意ください。

ところで、なぜ2回接種して生菌数を測定したのか、わかりますか?

市販の化粧品では1回接種して結果を判別することが多いのですが、
手作り化粧品の場合は、使用する粉ものの原料が菌汚染されている可能性があるため、
最初の1回目の菌接種は原料由来の菌を殺菌できるか調べて、
なおかつ2回目の菌接種は使用時での菌汚染を想定しています。

上記5種類ではいずれも菌は生育できない環境であることがわかりましたので、
いずれかの処方にされることをお勧め致します。

ただ、エタノールの量は1%変わると坑菌力に影響を与えますので、
出来ればデジタル秤りで正確に加えられることをお勧めいたします。

ちなみに手作り化粧水というのは、いかにエタノールを使いこなすかというのが
ポイントの一つになります。エタノールは、坑菌力を持ちながら肌にぬるとすぐに
蒸発して全く残らないというほかの防腐剤にはない特徴がありますし、
肌の中へ有効成分を浸透させることにも優れています。
他にもべたつきのでる原料のべたつきを抑えてさらりとした感触を与えたりと
エタノールに刺激を感じなければ、長所が多いので、化粧水に配合されることを
お勧めします。

5の処方は肌水の量を減らして、エタノールを10%加えていますが、
これはいかにパラベンの量を減らすかということを考えた処方です。
エタノールとBGの防腐力によりパラベンの減量に成功しています。
肌の上に残るパラベンの量は少なく、エタノールが配合されているので、
生薬エキスの肌への浸透も期待できる処方です。

なお、市販の抗菌効果のある成分を配合する際には、どの程度の量を入れたら
どの病原菌に効くかという防腐効力テスト結果がないと使いづらいということが
わかって頂ければ幸いです。防腐効力テストはそれなりの費用がかかるため
そういうデータをつけて売るのは難しいのかもしれませんが、
手作り化粧水の場合は防腐効果の確認はきっちりしておきたいので
今回のデータ収集となりました。