HOW TO 講座

化粧品の防腐について(メルマガより)

手作りをするというのは、決して簡単なことではなくて、色々と考えることが増えてきます。

このサイトで目指す手作り化粧品はすべてスーパーで買い求められる材料を使ってのものではなく、プロも使う素材を使用しての手作り化粧品です。
よく高い化粧品は高純度や高価格の原料を使っていることを売り物にしますが、基本的に高価格の原料はその機能性から化粧品への配合量は少量で済むため、実際の原価というのはそんなに高くありません。

どうせ手作りするのなら、そういった宣伝倒しの化粧品を凌駕するものを目指せればと思っています。今回は手作りをするに当たっての、基本について説明したいと思います。
まず、化粧品というのは、使い終わる前まで菌が繁殖せずに沈殿物や変色が無く、気持ちよく使えて当たり前のものです。もし、菌が繁殖すれば、変色したり臭いが変わったり、沈殿物が析出したりします。そして塗った部位にニキビが多発したりします。
そのため、手作りと言えど安心して使うために防腐することが求められます。

防腐をしなければ食品と同じで冷蔵庫で冷やしても、4日程度しか持ちません。
どうしても作るときと使う時に菌汚染されてしまい長持ちしないからです。
食品を例にして考えると、製造時に菌が存在しないレトルトパックなどは、室温で数年保存しても容器に傷がつかない限り菌汚染はないですが、すでに菌が存在する冷蔵食品は菌の繁殖スピードを抑えるために冷蔵する必要があります。ただ、市販の化粧品は菌汚染された商品の流通は薬事法により許されないので、通常は室温で数年保存しても菌が繁殖することは滅多にありません。
手作り化粧品に当てはめると、作るときはリビングなどではなくて空気中に埃が少なく菌が少ない場所つまり台所で作る必要があるでしょう。次に使用時の汚染ですが容器の口の大きさ(小さい方が好ましい)、容量(多いと菌汚染されやすいため防腐剤が多く必要)、手指の状態(荒れた手などは菌が多い)でだいぶ菌汚染は変わってきます。手作りの場合は一般的に防腐が弱いので、できれば容器の口が小さくて、少ない容量でこまめに使い、使う前の手指は綺麗に石鹸等で洗って清潔にするという必要があります。

問題は手作りの場合、満足に使える防腐剤がないために、市販の化粧水である資生堂の肌水や抗菌性のあるエタノールやBGを使って防腐する必要があります。肌水を使う理由はこの商品には、パラベンとフェノキシエタノールが含まれていますが、 誰でも容易に入手できて、防腐剤の濃度も常に一定であるためです。パラベンというのは0.15%以下だと防腐効果を発揮せず、そして0.25%以上になるとちくちくとした痛みを訴える人が増えてくるという厄介な防腐剤です。

つまり厳密に濃度を制御してやらないと危険なため、安全な化粧水を作るために、市販の化粧水を流用するわけです。
次に安定性なのですが、日本で売られる化粧品は北は北海道、南は沖縄で使用されることを前提に開発を進めなければならないので、通常ー5℃から40℃の間で3年間沈殿物や変色がないことを求められます。逆に3年間の安定性を保証できない場合は、使用期限を明示するように定められています。

もし、市販化粧品で変色や沈殿物が出た場合は、薬事法により消費者保護の観点から 製品回収命令が厚生労働省から出されます。通常、安定性を確認して販売するのが 当然なので、沈殿物の場合は菌汚染されて、その菌による分解物や生成物が沈殿してくる可能性が高いからです。さて、手作りの場合はどうかというと当然冷蔵庫に保存しても沈殿物がない安定なものを作る必要があります。
そうしないと菌汚染されたときに、それが菌のせいなのか、それとも成分が沈殿しているかどうかわからなくなるからです。余談ですが、安定性というのは結構テクニックがいる分野で、
不安定な成分をいかに沈殿や変色なく安定に配合するかが、化粧品技術者の腕の見せ所となります。